管理人はだれ！？

2015年10月13日「火曜日」更新の日記

ビクトリア朝時代の貴族の館を壊した時、黙って失敬してきた物だと、そのイギリス人は得意になっている。前夫は、夢中になっていくつかのドアノブを選び出し、私はそれがいくらか訊ねた。「全部で5ポンド」「もっと買ったら、もっとまけてやる」と言ってきたので、私達は箱ごと買い占めた。ドアノブのいくつかは鍵が合わなかった。「これじゃ困る」と言うと、彼は、「大丈夫だ」と、そのドアノブを作業場に持って行き、大きなハンマーで力まかせにたたき始めた。しばらくして、問題は解決したよと、カチャリと鍵のかかる様子を見せてくれた。神業だと思った。そのイギリス人は、興奮する私達に、「ドアがもっと欲しいならこっちに来い」と、奥に引っ張って行った。そこには、約4メートル四方の小さいプールのような水槽があり、その中に赤や白のペンキが剥げかかった木のドアがフカフカ浮かんでいる。「ここにペンキを溶かす溶液が入ってるんだ。いいかい、ドアを一昼夜浸けておく。そうすると塗装が落ちて、パインの木目が出てくるんだよ」彼は、水槽から引き上げ、ヤスリをかけて完成したドアを見せてくれた。パインの板が少しふやけて、人肌のように柔らかい。それが、古い、味のある質感を醸し出しているのだ。「古いパインはイギリスでもマホガニーを抜いて人気が出てきてるんだ。イギリスの玄関ドアはみんな無垢材で作ってるから、建物を壊した後もこうやって何度でも使う事ができるんだ」これが日本だったらどうだろう。町中に氾濫する合板やアルミのドアは、古くなればなるほどみすぼらしく見えてくる。少し不都合が出れば買い替え、付け替えの対象になり、捨てられた後は行き場がない。どうして日本の住宅は、あんなにもまがいものばかりを使うんだろう。スキプトンでの出来事は、今回ハウスメーカーに家づくりを依頼しようと思った時から私の中で頭をもたげていた。

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