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【所有するより豪華な賃貸があってもいい】

2016年9月20日「火曜日」更新の日記

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日本中に何の特徴もない賃貸マンションが増えた原因のひとつに、オーナー側の、「賃貸なのだから、最低限の設備で十分だろう」という意識があります。10年ほど前の話です。ある賃貸マンションを建てる際に、ユニットバスを入れることになりました。そのユニットバスには追い炊き機能がついていたのですが、それを見た女性のオーナーが、追い炊き機能は必要ないのでもう少し安いユニットバスにしてほしいというのです。その理由を尋ねると、「追い炊きなんて、贅沢でしょ」ということでした。その答えに違和感を覚え、「大家さんの家には追い炊き機能はないんですか?」と聞くと、オーナーさんは少し怒った様子で、「うちは付いているに決まってるでしょう」と答えました。彼女は完全に、「賃貸物件に住む人は、自分たちとは違う低所得者だ」という意識を持っているようで、その意識が、「この程度の設備でいいだろう」という発想につながっていたのです。このような意識を持つオーナーさんは、いまだに多く存在します。そのようなオーナーが建設会社と建築費の話をすると、コストを削る方向にしか話が進んでいきません。オーナーの意向に逆らえない建設会社は、それを受けて、「一部屋あたりの広さを小さくして、坪単価を上げましょう」「オートロックをやめましょう」「外壁のタイルをやめて吹き付けにしましょう」というような提案をすることになります。そうして造られた物件は、当初の予定とはかけ離れた陳腐なものになります。もちろん、この物件でしか得られない個性など、何もありません。このような物件は、現在の3点ユニット(お風呂とトイレと洗面所が同じスペースにある水回りユニット)のアパートが置かれている状態のように、いずれ、家賃をいくら下げても埋まらないという状態になっていくでしょう。 <041501・ユニットバス> 「人気のない3点ユニットと比べられたら困る」と思う人もいるかもしれませんが、20年前は3点ユニットの物件だって、どこも満室だったのです。これから賃貸マンションを建てるなら、「分譲に比べて賃貸は劣るもの」という価値観を変える必要があります。これは単なる理想論ではありません。人々の価値観が昔のように一律ではなくなった現在、分譲と同じ、もしくは分譲を上回るような品質の賃貸物件へのニーズは増えています。現在は、月々10万円のローンで買えるローコストマンションに住むよりも、自分のものにはならなくても、毎月15万円の家賃を払って好みの賃貸物件に住む方を選ぶ人たちが多く存在する時代です。また、家賃を経費で落とせる人たちに関していえば、マイホームを購入する層より収入が多いケースも珍しくありません。この人たちの中には、家賃を自己負担する必要がないために、多少は高くても気に入った物件に住み、イヤならすぐに別の場所に移る、というようなライフスタイルを持っている人が一定数います。いうなれば、彼らは家に縛られない生活をするために、能動的に賃貸物件に住むことを選択しているのです。このような人種は、50年前には存在していませんでした。また、東日本大震災のあと、「持ち家は地震で被害にあったとき、ローンが残るからリスクが高い」という理由で、何かあったら気軽に引っ越せる賃貸を選ぶ人たちが増加傾向にあるようです。つまり、現代は「家が買えない人たちが、賃貸に住む」という時代ではないのです。そこに、勝ち残るためのヒントがあります。

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