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債権執行と債権者代位権との関連づけ

2017年1月28日「土曜日」更新の日記

2017-01-28の日記のIMAGE
(1)整理の視点  ②の手続段階において生じうる,代位訴訟および取立訴訟という二うの制度の間の競合は,次の視点から整理することができる。 (a)代位訴訟を平等主義的に構想するか優先主義的に構想するか  これは,債権執行における平等主義をどのように評価し,破産制度と個別執行との機能分化をどのように構想するかという前提にかかおると同時に,個別執行における優先主義的要請への現実的な対応としての判例法理の代位訴訟の位置づけをどう評価するかということにかかっている。 (b)代位訴訟を簡易な手続として維持するか,慎重な手続に改造するか 平等主義をとる場合には,債務者および他の債権者の手続保障のために手当てを施し,代位訴訟を慎重な,言い換えれば費用のかかる「重い」手続に改造することにつながる。これに対して優先主義をとる場合には,軽快な優先弁済の実現のための便法として現行の判例の代位訴訟を維持する方向につながりやすい。 (2)両制度の関連づけに関する諸提案 (a)債権者代位権の廃止か活性化か  一方の極には三ヶ月[1969]のように,代位訴訟の廃止 を説く主張がある。これによれば,債権者代位権を廃したドイツ法も,取立訴訟を知らないフランス法も,それぞれ一貫したものとして理解されるが,それに。引き替え,代位訴訟と取立訴訟とを併存させる日本のやり方は屋上屋を架すものであるとされる。しかも債務名義および差押えというヨリ厳格な手続的要件を持つ取立訴訟よりも,そのような要件のない代位訴訟が第三債務者の資力リスクのない事実上の優先弁済という二重に有利な債権回収手段となっていることは受け入れがたい8)として,代位権廃止論を説く。  他方の極には,債権者代位権を優先弁済の簡易迅速な実現のための便法として,事実上の優先弁済効を認める判例法理を正面から肯定し,さらに進んで甲債権が金銭債権であるいわゆる本来型の場面でも,無資力要件を不要とする主張が存在する。ここには,個別執行における平等主義への批判的なスタンスが見いだせる。 (b)債権者代位権の平等主義的修正か優先主義的修正か  廃止論に対する応答として当然出てくる方向は,代位権の効果を平等主義的に修正するものであり,他の債権者の配当加入の手当てを用意するものである。例えば,林[1986] 9は,債権者代位訴訟に他の債権者が当事者参加することを許し,参加債権者と代位債権者とを平等取扱いすることで,実質的に配当加入を認めたのと同じ結果を実現しようとする。さらに小林論文は,代位債権者の債務者への告知を必要的として,それを通じて他の債権者にこの当事者参加の機会を保障しておくことで,参加しなかった他の債権者に対する代位債権者の事実上の優先弁済効を正当化する。  これに対して天野説の問題提起を受けて,判例法理に「それなりの合理性」を認め,債権者代位権を総債権者のための債務者の責任財産保全の制度としては捉えず,事実上の優先弁済を肯定する方向も有力になってきている。この立場は,債権者代位権を,債権者が金銭債権一般について有する一種の一般先取特権と構成して,代位債権者が第三債務者に対して直接有する固有の権利として捉える)。  しかし,ここで判例法理に認められる「それなりの合理性」とは何か。これは債権者代位権を通じた優先主義がいかなる機能条件の下で認められるかという問題であり,さらに。はこの判断をいかなる法律要件の解釈として構成するかという問題となる。それは言うまでもなく民法423条の「保全するため」の要件の解釈にかかわる。従来これは無資力要件と解されてきたが,無資力の場面(③以降の手統段階)で,代位債権者に優先弁済を得さしめた方がよいのはいかなる場面かという問題として検討されなければならない。

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