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買ったお客が必ずトクする

2018年1月6日「土曜日」更新の日記

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 未来の展望ということになると、街の不動産屋は概して無能力者である。しかし、このことはその街に住んでいる人に共通の傾向である。たとえば、30年前に横浜の住人たちに、「横浜はどこが有望ですか、土地を買うのはどこがいいですか?」ときいたら、おそらく口を揃えて「それは伊勢佐木町ですよ」と答えたに違いない。「横浜駅前はどうですか?」とききかえしたら、「あんなとこ、砂利置場になっているところですよ」と首を横にふったに違いない。しかし、30年たって見ると、伊勢佐木町はすっかりさびれてしまい、横浜駅西口は押すな押すなの大盛況を呈している。  だから未来はどうなるか、もしくは、未来をどう変えるか、については自分で判断するよりほかない。しかし、現状についての知識なら、街の不助産屋のほうがよく知っている。そういう街の不動産屋を味方にしておくことがよい買物をする秘訣の一つであるといってもよいであろう。                                                                                                                           私は不動産挟資については、それを100パーセント業としていないので、やや中途半端なところがある。しかし、普通の商売人に比べれば、不動産賃貸の会社も持っているし、しょっちゅうピルを建てたり、新しいマンションを買ったり、新しい事業もやっているので、不動産を買うチャンスは多い。今の私なら、街の不助産屋にとび込みで入っても、誰ということがわかるから鄭重に扱われるが、うちの家族は一番下の芸術づいた息子を除けば、いずれも新聞に挟まれて送りこまれてくる折込み広告の愛読者だから、安い売り物があると、つい不動産屋にも電話をかけるし、街の不動産屋にもとび込みで入って行くようである。  女房はまだいいほうだが、娘になると、車も運転しないで、のこのこ出かけて行く。もちろん、最初から自分の身分を披歴するわけもないから、貸マンションや安アパートを探しにきたくらいとしか思われない。値の高いマンションや土地を買う話をもちかけると、不助産屋は必ずいぶかしそうな目で、上から下までジロリとなめまわすように挟分をする。その点は、家内も同じ扱いを受けるらしく、一般に不動産屋は女のお客を一人前扱いしてくれない。途中から亭主が乗り出して来なければ話は具体化しないと思っているようだから、気乗りのしないやりとりからはじまる。不動産屋には、不助産屋の奥さんをはじめとして、女性のブローカーも結構、たくさん働いているのに、女のお客をあまり信用しないのは、やはり日本の平均家庭では経済の実権はご主人の手に握られているからであろうか。                                                                                                物件の現地に連れて行ってもらうために、外で待っているロールスーロイスまで案内すると、途端に態度が一変する。ロールスーロイスに乗ってくるような人なら、きっとお金はいっぱい持っているだろうし、何十億円もする物件でも簡単に買ってくれるかもしれないと思うようになるのであろう。この意味では、ロールス・ロイスも少しは役に立つ。バーやクラブに行ったときは、勘定がベラボーなことになる心配があるが、デパートやホテルに入るときは、ドアーマンが真っ先にとんできてくれるし、駐車もわざわざ駐車場に入れる必要がなく、ドア脇の一番目立つところに駐車させてくれる。銀行のような融資をしてくれる相手だと、警戒の目で見られることもあるが、不動産屋や貴金属商や毛皮屋に行くと、下にもおかない扱いをしてくれる。だからと言って気前よくお金を使うわけではないが、不動産だけは、買った人と売った人と、また仲介をした人と、どちらがトクをしたか、見比べて見ると、買わされたほうが問題なくトクをする。騙された積もりで、割高なものを買わされた場合でも、欠陥商品でさえなければ、いつか値上がりをして、結局は高く買わされた人のほうが儲かるのである。

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