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手数料を値切ると情報も逃げる

2018年1月7日「日曜日」更新の日記

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 不動産を買う側の人としては、できるだけ網を広く張って、できるだけいい情報を集めなければならない。そのためには、住宅情報とか、住宅新聞のようなメディアにも目を通さなければならないが、折込み広告もバカにはできない。毎日のように新聞の中に挾み込まれてくる不動産屋の広告は、広告に出てくるくらいだから、売りにくい物件であるとか、割高の物件しかないだろうと思う人がいるかもしれないが、現に、うちの娘のマンションも、うちの息子のマンションも、すべて折込み広告の中から見つけ出したものである。広告を丹念に読んでいると、もちろん玉石混淆だが、時々、真珠のような物件がまぎれ込んでいることがある。いい物件だと、不動産の動きの早いときは愚図愚図しているうちにすぐ予約済みになってしまう。  だからふだんから、自分は何を買いたいと思っているのか、どんな位置のところを狙っているのか、それからその値段は安いのか高いのか、直ちに判断のできる知識を持っていることが必要である。もちろんお金をあるていど持っていなければ、身助きはできないが、いくらお金をたくさん持っていても、またいくら不動産が有望だときかされていても、何を売ってよいかわからなければ、同じように身動きができないのである。だから不動産の価格や将来性についてのあるていどの知識のあることが大前提で、それをちゃんと身につけていて、不助産の広告を睨めば不動産屋に騙されるのではないかと気をもむこともないし、たまたま出てきた不動産屋は誠実な人かどうかの区別も簡単につくのである。  私は不動産を買う必要に迫られて、とうとう不動産の専門家まで自分の会社の中に抱え込んだことがあるし、また不動産の売買のできる専業の会社まで持つようになったが、それでも不動産を買うのに、つねに自分の会社の情報に依存しているわけではない。よい情報を得ようと思えば広く人を動員しなければならないし、広く人に協力してもらおうと思えば、協力してくれそうな人に金儲けのチャンスをあたえなければならない。つまり街の不動産屋に力をかしてもらおうと思えば、手数料を値切ろうなどと考えないことである。  まだ不動産に手を出すのもやっとで、仲介料を出し惜しみしていた頃は、私も何とか仲介料を払わないですむ方法はないだろうかと知恵をめぐらした。どうにも逃げられないと観念してからでも、何とか半額ですませようとして値切りにかかった。しまいには、不助産の売買のできる会社もつくり、不動産取引主任の資格を備えたプロもやとい、「うちも同業者ですから、手数料は半々にしましょう」と、ブローカー料を半分にする体制も整えた。しかし、そういう方法をとると、ほかに持って行きようのない物件は向こうも不本意ながら、仲介料折半の要求に応じてくれるが、どこでもすぐ人がとびついてくるような有望な物件は、100%手数料を払ってくれる人のところへ持って行ってしまう。ブローカー料を値切る人は、狭い社会のことだから、すぐに知れ渡ってしまい、一度値切ると、次からはよい情報を持って来てくれなくなってしまう。そうなると、3%を節約したほうがよいのか、それともホットラインがつながっているほうがよいかということになって、結局、ケチはできないなあという結論に達してしまうのである。  不動産のブローカーのほうでも、この人は気前のよい人だとわかれば、有望な出物があったら誰をさしおいても、真っ先に電話をかけてくる。不動産の売買の活発なとき、不動産の値上がりがまだはじまったばかりの出鼻の頃に、こうした情報がいかに大切かは改めて強調することもないであろう。不動産の売買を専門としたプロの中にも、手数料を規定通り払う業者がいるのを見ても、この間の事情がよくわかるのである。

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