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不動産があればピンチはしのげる

2018年1月10日「水曜日」更新の日記

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 不動産のこうした性質は、不動産業者の経営上のトラブルを解決するについて大いに威力を発揮したが、不動産の売買を業としないほかの業種の人々の「救いの神」の役割をも演じてきた。時世に対する見通しが悪くても、経営の手腕が悪くても、会社はたちまち左前になる。そうした場合、土地や建物が借り物の会社では、経営が成り立たなぐなると倒産に追い込まれたが、広い工場敷地を持ち、たまたまその土地の値上がりがあると、それを売却することによって借財の返済に充てたり、解屈する従業員の退職金に充てたりすることができた。高度成長期にあっても、成長のかげになって斜陽化する企業は意外に多く、そうした企業の経営者からしばしば相談を受けた。そういう人たちに私があたえた処方箋は、持っていた土地や建物を活川することであり、そのおかげで大抵の人々が倒産を免れることができたし、転業をすることもできた。というのも、不動産を持だない企業は、逆風になると打つ手を失うが、不動産を持った企業は、不動産を担保にして銀行から融資を受けることもできたし、それよりも何よりも不動産がまだ手つかずの、傷の浅いうちに思い切った切開手術をしようと発想する人が多いので、結果としては大事に至らず、不動産が手元に残った。それらの人々は、手形の決済のできる時点で廃業をしたり、工場を地方に移転したり、あるいは会社を別会社にしたりして、事業体をほかに移し、残った土地を生かす方法を選んだのである。  こうして見ると、不動産が本当に威力を発揮するのは、企業や個人がピンチに追い込まれたときである。何百億円の含み資産があるといっても、ふだんは「絵に描いた餅」にすぎない。                                          日本一を誇る森ビルの社長さんにしても、何兆円の含み資産を持っているか知らないが、人よりたくさんメシが食べられるわけでもなければ、人より贅沢ができるわけでもない。自分の住むところと、自分の生活に必要な収入さえあれば、不動産などたくさん持っていてもいなくとも、この世を生きて行くのに大して支障はないのである。  しかし、会社がピンチにおちいったときの用意をするとなれば、不動産より頼りになるものはない。また社会的信用を得ようと思えば、とりわけ銀行に信用してもらおうと思えば、不助産ほど物を言うものはない。さしあたり金ぐりの必要に迫られて運転資金を銀行に借りに行くとする。銀行がお金を貸す基準は、こんなに金融がゆるんだ状態の下でも、第1は貸す相手が信用できる人かどうか、ということであり、第2に返済能力があるかどうか、ということである。そして、第3に担保がありますか、ということになる。借りるお金が小額の場合は、支店長の権限で無担保で貸す場合もあるが、その場合でも、銀行が納得のできる保証人を要求される。しかし、これが何千万円、何億円という巨額になると、不助産か、上場企業の株を担保に入れなければ、とても貸してもらえない。つまり不動産は、企業もしくは個人が金ぐりの必要に迫られたときに、お金を貸してもらうための担保として役に立つものである。これがあるとないとでは、社会的な信用も違うが、会社の経営に大きな影響をあたえる。不動産のない場合は、いつも金ぐりに支障をきたさないように現金の用意をしておかなければならないが、不動産があればいつでもお金を借りられるので、スレスレの資金で事足りる。お金は時とともに目滅りして値打ちのなくなるものだから、現金で持つ度合いの低いほど企業運営上、有利なのである。

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