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退去時の通常損耗等の修繕費用は貸主負担

2018年2月7日「水曜日」更新の日記

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 東京都は「礼金・更新料のない契約の普及促進」だけでなく、退去時の敷金の清算や修繕費用の負担について定めた、いわゆる「東京ルール」を推進しています。  東京ルールは、退去時の敷金の清算や入居期間中の修繕をめぐる紛争についての相談が多数寄せられたことを受け、安心して貸し借りできる民間賃貸住宅市場を確立するために、東京都が条例(東京都賃貸住宅紛争防止条例)で定めたものです。  この条例では、宅地建物取引業者が借主に書面を交付し、退去時の原状回復と入居中の修繕について、費用負担に関する法律上の原則や判例により定着した考え方などの説明を義務付けています。  原状回復について、退去時ではなく契約締結時に当事者双方がよく確認し、納得して契約すれば、トラブルを未然に防ぐことができます。  費用負担は、国土交通省の「原状回復ガイドライン」にそって定められています。国のガイドラインですから、東京都にかぎらず全国の賃貸住宅に適用されるものです。  その原状回復ガイドラインでは、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としています。一方、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は家賃に含まれるものとしています。つまり、通常損耗や経年変化などの修繕費は、原則として貸主が負担するということです。  このガイドラインでは、原状回復は賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化しています。  「家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡」、「テレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気焼け)」、「特に損傷していないものの、次の入居者を確保するために行なう畳の表替え・裏返し、網戸の交換、浴槽、風呂釜等の取替え、破損・紛失していない場合のカギの取替え」、「フローリングのワックスがけ、台所・トイレの消毒、専門業者による全体のハウスクリーニング」などはすべて貸主負担となります。  次の入居者を確保するためのリニューアル費用は、貸主負担ですから、敷金で清算することはできないのです。借主負担に該当するもの(手入れを怠ったもの、用法違反、不注意によるもの、通常の使用とはいえないもの)がなければ、敷金はそっくり返金することになります。  敷金で清算できないのなら、その分家賃に転嫁するしかありませんが、値下げ圧力が強まっている現状では値上げは難しいでしょう。  通常の使用による原状回復費用は家賃に含まれると国のガイドラインが定めている以上、賃貸オーナーが収益見通しをたてる際には、賃料から原状回復費用を差し引いたものを収益ととらえるしかありません。  一方、オフィスビルに関しては、フロア・水回り改修工事、個別定期工事などについて、オーナー負担になるのかテナント負担になるのか、契約時に区分を明確化しておく必要があります。

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