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建物を保有するリスク その3PCBリスク

2018年2月20日「火曜日」更新の日記

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 保有する建物の設備にPCBが使用されている場合には、賃貸オーナーはPCBリスクを負うことになります。  PCB(ポリ塩化ビフェニル)は電気絶縁性が高い、熱で分解しにくいなどの性質を有することから、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体など様々な用途に使用されていました。  電気機器の代表的な使用例は高圧トランス(変圧器)、高圧コンデンサ(蓄電器)および安定器の絶縁油です。  しかし、PCBが人と環境に対して有害な物質であることが発覚し、その毒性が社会問題化したことで、1974年に製造および新たな使用が禁止されました。  PCB廃棄物は食物連鎖などを通じて体内に蓄積されやすいこと、自然環境のなかで分解されにくいことなどから、容易に廃棄することができず、保管が義務付けられていました。  たとえ土地・建物を売買しても、その建物に付随させてPCB含有の設備を譲渡することはできません。また、勝手に移動させることもできません。  ビルオーナーはPCBの適正な保管のほか、定期点検、保管状況の届出を行なう義務もあります。  製造や新たな使用が禁止されて以来、30年にも及ぶ長期保管のため、PCB廃棄物にも紛失や漏洩が発生し、環境汚染の進行が懸念される状況になりました。  こうした事態を受け、2001年に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」が制定されました。  その結果、PCB廃棄物の保管事業者は2016年までに処理することが義務付けられることになりました。  保管事業者は、適正な処理、処理施設への適正な運搬、処理の届出の義務を負うことになります。  この特別挌置法には罰則規定も設けられています。定められた期日(2016年7月15日)までに適正処理を行なわず、環境大臣または都道府県知事の改善命令に違反した場合は「3年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金または併科」とされています。  また、PCB廃棄物を譲り渡した場合、または譲り受けた場合(環境省が定める場合を除く)にも、同様の罰則が適用されます。PCB廃棄物は譲渡できないのです。  このほか、PCB廃棄物の保管および処分について届出を行なわなかったり、虚偽の届出をした場合や、PCB保管事業者の相続、合併または分割により事業を継承した法人が継承の届出を行なわなかったり、虚偽の届出をした場合も、罪に間われることになります。  「廃棄物処理法」でも、PCB廃棄物に関する様々な罰則規定があります。  たとえば、PCB廃棄物の保管などの届出を行なわなかった場合には「6ヵ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」、基準不適格な収集運搬・処分業者へ委託した場合には「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または併科」、不法投棄には「法人には1億円以下の罰金」などです。  賃貸オーナーの方々は、ご自身の建物が社会問題の火種とならないように、まず保有する建物の電気機器にPCB含有油が含まれているかどうかを調べておかれることをおすすめします。銘版に記載されている形式や製造年月日をもとに、メーカーまたは社団法人日本電気工業会にお問い合わせください。  そして、PCBの含有が判明した場合には、処理が完了するまで、法令に基づき適正に保管しなければなりません。具体的には、PCB廃棄物を保管する場所に人が立ち入らないように囲いを設け、表示をすること、またPCB廃棄物本体にも表示することなどがあげられます。保管する際には、都道府県知事に保管届出が必要になります。 廃棄物処理法では、PCB廃棄物は特別管理産業廃棄物として、事業者は特別管理産業廃棄物管理責任者を選任し、厳格な管理をするよう定めています。  特別管理産業廃棄物管理責任者は、有資格者または所定の講習会を修了した人しかなれません。  処理に際しては、PCB廃棄物の保管事業者は収集運搬事業者と収集運搬契約を、日本環境安全事業株式会社と処理契約を結ぶことになります。  PCB廃棄物の処理費用は、処理料金のほか別途運搬料金がかかります。中小企業などについては、処理費用負担の軽減をはかるため、PCB処理基金から費用の70%が助成を受けることもできます。詳しくは日本環境安全事業株式会社へお問い合わせいただくことをおすすめいたします。

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