管理人はだれ！？

2018年5月13日「日曜日」更新の日記

　地方を旅すると、白と黒のコントラストが美しい蔵や、朽ちかかって、中の木が姿をみせているような荒壁の家をよく見かけます。そんな光景に出会うと、いやがうえにも旅情をかきたてられ、心がなごむものです。 　最近の都会では、外壁に漆喰や土壁を用いた家を見かける機会が減ったように思います。どうも塗り壁は時間や手間がかかるし、コストが高くつくということで敬遠されるようになってしまったようです。 　今風のボード類を用いる壁づくりを乾式工法というのに対して、土塗り壁など、水を使って施工する方法を湿式工法といいます。 　土塗り壁のすばらしいところは、木と同じように調湿性があること。湿度の高い夏や梅雨どきには湿気を吸い込み、乾燥する季節には湿気を吐き出してくれるのです。 そのうえ日本人の感性に合う美しさをもっているのですから、これからの家づくりにもっと取り入れてほしいと思います。 　さて、荒壁という下地に塗る土には、粘土質の上が使われます。この上に割れを押さえるための「すさ」という繊維を入れ込んでいきます。 　すさには、おもにワラが使われていますが、このワラを一定の長さに切り揃えて混ぜ、半年以上ねかせて熟成させるのです。そうすると、ワラが腐って繊維だけが残り、他の部分は土と交ざって粘りけがでてきます。これを塗りつけてから完全に乾くまで、さらに時間をおき、割れやひびの状態に合わせて、中塗り、上塗りと進んでいきます。 　これだけの工程と時間をかけてようやく下準備完了というわけですから、注文する方も、つくる方もよほどの覚悟が要求されます。ボードを貼るだけで下地はＯＫという、簡単な乾式工法が主流になってきたのもそうした点では無理からぬことでしょう。 　しかし、健康的に住むということを第一に考えたなら、時間と手間を惜しむべきではないと思います。 　家は永くもたせるものです。あせって工期を短くするよりも、将来のことも考慮して、ていねいにしつらえることの方が大切ではないかと思うのです。 　さて、話がそれましたが、次に仕上げに進みます。土塗り壁の仕上げには、漆喰や仕上げ用の素材が塗られていきます。 　漆喰は貝を焼いたりしてできた消石灰に、糊とつなぎのすさを水で練ったものです。ほんものの自然素材で、丈夫で長持ちするうえ、時間の経過とともに味わいが出てくるといった、すぐれた面を持っています。また、湿度を調整する働きがあることも、最近評価が高まってきた要因といえるでしょう。 　漆喰の調合はおもに現場でおこなわれますが、最近では、水を交ぜて練るだけですぐに施工できる調合済みのものが出回っています。これらの中には有害な接着剤や防カビ剤が使われていることもあるので注意したいものです。 　含まれる有害物質を吸着させるためには、木炭を混ぜたり、アースセラミクス剤を混入する方法もありますから、施工の際は住宅会社に相談してみてはいかがでしょうか。 漆喰のほかに、壁仕上げ材として「珪藻土」という天然素材が注目されています。 珪藻上とは、珪藻という藻の遺骸が海底や湖底に堆積し、何百万年という時を経て化石化したものを、砕いて土にしたもののことです。これは別に新しい材料というわけではなく、占くから七輪や耐火断熱レンガに使われていました。建材としても、この粉末に石綿繊維や麻のすさを混ぜて水で練ったものが、保温材として用いられていたのです。 　比目からおなじみたった珪藻Ｌが、今新たに壁仕上げ材として各方面から熱い脱線をそそがれる理山は、まず軽いこと。 そして、多孔質なので調湿力があり、断熱性に富むことなどによります。 　漆喰や珪藻土などの、古くから住宅に使われてきたものが、叫び浮上してきたのは、天然、自然の素材ならではの魅力が見直されたということでしょう。 　人に暖かさを伝える効果をはじめ、調湿性や断熱性に富み、結露の防止にもひと役かってくれます。脱臭や遮音などのすぐれた機能も見逃せません。 　そして、なによりもすばらしいのは、土壁が何度でも蘇る立派なリサイクル品だということです。 　古い民家では、改築の際にはもとの土壁に新しい土を加えて練り直すという工夫をこらし、何代にもわたって使い続けました。 　朽ちれば土へ戻り、肥沃な大地の一部となっていきます。土壁は、まさにエコロジーな素材の代表選手といえるのではないでしょうか。

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