人はフローリングを目指すのである
2018年6月26日「火曜日」更新の日記
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- かくいう私の20代も、フローリング希望に燃える女だった。どこがいいのかフローリング。何がいいのかフローリング。ようするにせせこましいスペースにおけるおしゃれな暮らし方のイメージが、パリの屋根裏部屋なのだ。白いシーツにくるまって、クロワッサンをほおばりながら、西向きの窓の枠に白い部屋着をぶらさげ、傾斜した天井にはセピア色になった子供の頃の写真をピンナップする。フェルトの室内ばきにコットンのソックス。足元は板張りじゃなくちゃイヤーンなのだ。どんなに狭いスペースでも、そこがパリの屋根裏なら、おしゃれに決まっているというゴーインな夢状態で、人はフローリングを目指すのである。広いスペースなら、ニューョークのロフトというイメージに置き替えてもいい。とにかく親といっしょのお茶の間から抜け出して、自分なりの生活をするのだから、畳にこたつではいかんのだ。私がひとり暮らしを始めた時は、とにかく親元を離れるということ自体が目的だったので、部屋の造作に対する希望は、特になかった。
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