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「生活者の目線」での設計

2018年9月26日「水曜日」更新の日記

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このように分析・整理した生活の計画を空間計画にまとめるわけですが、設計者の恣意的な価値判断や独善によって建て主・居住者の生活の計画を素通りしてしまい、それを反映しようとしていない設計が多く見られます。そうした設計では、いくら設計図通りの住宅ができあがったところで、これから始まる居住者の生活においての現実性や総合性はまったく欠落しており、暮らしにくい住宅となることは必定です。生活の基盤としての住居の機能に、すでに設計の段階、住宅が建ち上がる前から、問題を抱えることになります。また、住宅の設計・施工の過程では、技術や法律など専門的なことがらによってその全体が支配されています。設計者あるいは施工者がつねにその時点の状態を説明をすることがなければ、専門的な知識を持たない建て主は、何がどうなってどこまで進んでいるのかが理解できないままに、そのプロセスを指をくわえて見ているという状況に陥りがちです。これが建て主の期待・イメージに反したり、食い違ったりする一因となっています。言ってみれば、住み手にとっては住宅をつくるうえでは付随的なことでしかない専門性が、自分の暮らす住宅とそこで展開される生活を規定してしまっているのです。生活に貢献するための専門性が、逆に生活に枠をはめるという本末転倒の事態が招かれます。そうではなく、よりよい生活の実現やその改善・向上のための住宅をつくるべく専門性を生かす、それが本来の専門技術のあり方でしょう。住宅の目的である安全で快適な生活を規準とし、それを実現するために技術・法律等の活用を検討する。つまり、生活者の目線を通して技術の適用をはかる。-このような考え方・方法によってこそ、設計は進められなければなりません。そしてそれによってこそ、設計に対する建て主の理解と共感は深められるのです。この「生活者の目線で考える」ことは、設計・施工のすべての場面で配慮されなければなりません。建て主・居住者と設計者が終始意見を交換し、応答をくり返しながら生活の計画から空間計画の具体化へと進むとき、「生活者の目線」がそれを支えます。

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