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自分なりの長期的な相場観を持つこと

2019年5月7日「火曜日」更新の日記

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当たり前の話ですが、不動産の流通市場には「資産価値が高い物件」と「資産価値の低い物件」が流通しています。問題は、「資産価値が低い物件」は安く売られているのか、ということです。そこに大きな落とし穴があります。実質的には資産価値が低い物件なのに、なぜか、高い価格で売られているという現実があるのです。その手の物件の多くは、一過性の人気に便乗して派手な広告が打たれ、チラシがばらまかれて販売されているような新築物件です。一方、実質的には資産価値が高いにもかかわらず、意外と安く売られている物件もあります。そういう物件は、たいていは中古物件です。誰にも気づかれずに、ひっそりと売られています。この二者の物件の特徴をどう見破るか。そこがマンション選びの腕の見せどころです。もっとも、実際これを見破るのはプロでも難しいのです。しかし、「資産価値の高い物件なら高く買っても仕方ないが、資産価値の低い物件なら絶対に高く買いたくない」ものです。そんなときに、収益還元法は強力な武器になります。収益還元法とは、簡単に説明すると「賃料から実質的な価値(バリュー)を推理する方法」です。この価値を「収益還元価格」と呼びますが、実際の希望売り出し価格(プライス)ではありません。値札と収益還元価格は異なるものです。たとえば、どちらも同じ築年数と品質で、5万円の賃料がとれるマンションAとBがあるとします。Aには、3000万円というプライスがつけられていました。Bには、4500万円というプライスがつけられていました。「この差額1500万円を、どう解釈すればいいのか。その解釈法が肝なのです。結論として、収益還元法では、この価格差は資産価値としては無駄であると考えます。仮に、住宅ローンを使って取得した場合、金利まで含めると2000万円以上無駄になると考えます。つまり、不動産による財産形成を成就させるためには「実質的な資産価値に対し、それに相応しい適正な値段で買う」ということが大切なことなのです。ですが、この適正な値段というものの定義が百家争鳴で、人気投票のようにいつまでも曖昧なままなので、そこに収益還元法を使う意義があるのです。「言い換えれば、地元に近い職場に勤務しながら定住しようとするさまざまな地縁層によって形成される私情価格や限定価格ではなく、一時的にそこに住んで、就業効率やライフプランを最適化しようとしている狩猟民族が支払うコストに対して見合う賃料(=価値)を起点にして価格を推定する。そうした手法です。乱高下する世間の相場感覚に背を向けて、自分なりの長期的な相場観を持つこと。それこそが収益還元法、という必殺の鑑定評価法の役割なのです。

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