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恐怖の収益還元法の奥義

2019年5月12日「日曜日」更新の日記

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私は、仕事柄東京という、最も世界に知られたアジアの中心地におけるマンション価格の統計を分析してきました。そうすると、ある種の傾向が見えてきます。明らかに衰退傾向にあるニュータウンのような街は、概ね8平方メートルのマンションの賃料が2万円前後以下なのです。つまり、少なくとも東京圏においては、ファミリータイプの賃料が2万円以上ないと、その街は、資産価値の危険地帯ということが言えるのではないか。そう思っています。マクロ的な面における収益還元法の意義は、ある特定エリアに立地する不動産の実質的な資産価値を通じて、街や人の経済力が解析できることです。この点は、本来の収益還元法の利用意図とは異なりますが、実は非常に重要な観点なのです。賃料という尺度は、人の移動(=人知の回転率)を示すので、必然的に、人口動態と密接な因果関係があります。それが活発であれば、街の経済力は維持され、人口構造の偏在も起きず、郊外のようにゴーストタウン化する心配がないという傾向を示してくれます。東京周辺のニュータウンに限らず、全国各地のゴーストタウン化が進む街の賃料を調べれば、その傾向は一目瞭然です。そんな街は、広いファミリータイプの賃料が、概ね2万円未満なのです。賃貸マーケットが脆弱であることは、人が流動化しないということの証左であり、人が移動しなければ、街という地域的な機構は停滞し、したがって、多様な文化や技術の創造は不可能なのです。要するに、人知が切磋琢磨される機会が少ない街ということです。「すなわち、それは、賃料という価値基準を通じてマンションの資産価値を知るということだけでなく、その先の価格形成のメカニズムを知ることによって、街の将来性まで判定できてしまうということを意味します。それが、またまた恐怖の収益還元法の奥義なのです。例外的に、賃料相場が低いのに価格が高いところもありますが、それは高額所得層にとっての限定価格であり、つまりは高級リゾート地のようなところです。

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