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借地権の法定存続期間(2)

2020年1月6日「月曜日」更新の日記

2020-01-06の日記のIMAGE
借地期間というものは長期であることが多く、期間の起算点も不明瞭であり、したがって、期間の満了時も不明確であることが少なくないこと、また、それがはっきりしていたとしても、当事者が期間満了に気づかず、土地を継続して使用している場合が少なからずあることから、一般の賃貸借における黙示の更新(民法619条)を、さらに進めて、借地期間満了により借地権が消滅した後、土地を継続して使用している場合で、土地所有者が遅滞なく異議を述べないときは、従前の契約と同一の条件で再び借地権を設定したるものとみなすという規定も設けた(旧借地法6条)。法定更新といわれるものである。この場合、地主が異議を述べて更新されなかった場合、上記のような建物買取請求権についての規定は条文には設けられていないが、この場合も建物買取請求権があるというのが通説となっている。さて、このように、当初の借地法では、借地権者に更新の請求権と法定更新という保護を与えたが、借地法制定時は、土地所有者が建物を買い取るという気持ちがあって、異議を述べて、更新の拒絶をすれば、更新されず、土地を返還しなければならないという構造になっていた。その後、昭和に入って、満州事変、日中戦争が起こり、これにもとづく軍需景気が勃興し、都市への工場と勤労者の流入が激しくなり、土地の不足と相まって、建築資材も不足してくると、建物買取請求権を行使しても、かえって地主をよろこばせるだけで、これが更新拒絶の歯止めとなる機能も失われてきた。そのような社会情勢と都市勤労者の住居の場を確保して戦争協力に専念させる意味もあって、第二次世界大戦直前の昭和16年に借地法を改正し、土地所有者の更新拒絶のための異議申立ては、「自ラ土地ラ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合」に限るという改正がされた(この改正は旧借地法4条、6条とも共通)。なお、この条項について、改正法施行当時の裁判所の解釈は、「自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合」であれば、ほぼ土地所有者の更新拒絶を認めていたが、第二次大戦中の空襲による建物の焼失と戦後の住宅難を背景として、「自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合」であっても、その土地を使用する必要性が土地所有者と借地権者とでは、どちらが強いのかということを比較衡量して定められるようになり、現状を変更する判決を嫌う裁判官の心情と相まって、よほどの場合でなければ、土地所有者の正当事由が認められず、その結果、借地権は建物が朽廃しない限り存続するということになっている。

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