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土地賃借権と賃借権の物権化

2020年1月25日「土曜日」更新の日記

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土地賃借権というのは、契約条件に従って、借地期間中、地主に対して土地を使用させることを要求できる権利である。地上権が、土地と地上権者との関係であるのに対して、土地賃借権というのは、あくまでも、地主と借主との人間関係である。したがって、地主に無断で借地権を譲渡したり、転売したりすることはできない(民法621条)。そして本来的には、地主がかわってしまったとき、新しい地主と賃貸借契約をやり直さないと、その土地を使用することができないという関係にある。また、その期間は最長でも20年に限定されている(民法604条)。地主が変われば、新地主に対抗できない点については建物保護法による保護が加えられ、借地期間については、旧借地法の創設により延長され更新についても旧借地法の改正で保護され、また、第三者への譲渡について、地主の承諾が得られない場合には、これに代わる裁判所の許可を得れば譲渡できるようになっている。これを賃借権の物権化といっている。しかし、賃借権の物権化といっても、物権そのものになったわけではない。依然として、両者の差は残っている。そのもっとも主なものは、賃借権である借地権を譲渡する場合である。この場合、地主の承諾が得られなければ、これに代わる裁判所の許可を得れば譲渡できるといっても、その場合も、承諾料相当の一時金の給付と地代改定が条件とされる。その一時金は、一般の場合で、借地権価格の10パーセント程度である。これに比べて、地上権の譲渡は自由であり、承諾料などの一時金の支払いは不要である。賃借権である場合には、その流動性が劣るといえる。これを比較すると、賃借権である借地権の価格は、地上権である借地権の価格より10パーセント程度低いといってよいであろう。また、地上権については、抵当権その他の担保権が設定できるが、賃借権については、これらの担保権を設定できない。すなわち、担保力が劣るということである。もっとも、建物に抵当権を設定しておけば、その敷地である借地権には、それが賃借権であっても、その抵当権の効力が及ぶという判例があり、この解釈が定着しているので、心配はないといえるが、それにしても、金融機関としては、土地に直接に抵当権が設定できるほうが安心できる。こういうことからも、賃借権である借地権の価格のほうが低くなる。この分を5パーセントぐらいと考えると、総合して、地上権である借地権の価格より15パーセント前後ぐらい低くなると見てもよいであろう。

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