SUMAIRINA

トップ > 令和2年2月> 6日

職人さんの心意気を知る(1)

2020年2月6日「木曜日」更新の日記

2020-02-06の日記のIMAGE
(1)工事が着々と進んでいくうちに、今まで漠然としたイメージしかもっていなかったのが、だんだん具体的に目に見えてくるようになります。そうなると、とたんに変更をもち出したくなる建て主もいます。図面では和室の窓が北側と東側の2ヵ所に描いてあるのに、ある日現場に行ってみると、北側が壁でふさがれていたことがありました。驚いてどうしたのか聞いてみたところ、大工さんに頼んでふさいでもらったというのです。「北側に窓を開けたのは、夏に暑いので風通しをよくするため、と打ちあわせたのでしたよね」「でも北側に窓があると冬は寒いでしょ」「冬は閉めておけばよいのです。雨戸もつきますし、カーテンを引いておけば寒さは防げます。それよりこれでは夏は暑くてどうしようもありませんよ」そこで、プランを決めるときの打ちあわせに戻ることになってしまいます。大工さんはこの話しあいのあいだ、どういう結果になるのか、このまま仕事を続けてもよいのか、せっかくつくったものを壊すことになるのかと、やきもきしながら手を休めて成り行きを見守らなくてはなりません。(2)仕事中にうろうろしない。「これは何に使うものですか」と建て主に聞かれて、今やっている仕事を中断して、説明をしなければならないのは、口下手の職人さんにとって大変に苦痛です。また、ほうきを持って職人さんのあとを追いかけて掃除をするご隠居さんもいます。本人としては仕事場をきれいにすれば、仕事がやりやすいだろうという親切心からの行動なのですが、そこで仕事をしている人にとっては、はなはだ迷惑なのです。木材を持って振り返ったらご隠居さんにぶつかることもあるでしょうし、金鎚を振り上げたら後ろでゴツンなどとなったら大変です。掃除は職人さんが1日の仕事を終えて帰る前にやっていきます。「釘が落ちていましたよ。釘箱はどこですか、いいえ、いいんですよ、私が道具箱に入れてあげますから、どうぞ気にしないで仕事を続けてください」といわれても、万一、道具箱の中に手を突っ込んで、整の刃先にでも触れたら大変です。建て主は仕事を手伝っているつもりなのですが、職人さんは見張られているような気分にもなります。「うちの孫です。なかなか成績がいいんですよ。とくに算数が得意でね、ほら、大工さんに九九をやってみせてごらん」「息子の結婚式の写真です。O×ホテルで式を挙げましてね、媒酌人は、ほら、あの代議士のOxさんなんですよ」職人さんはお孫さんをほめたり、結婚式の写真を見にきているわけではありません。3時のお茶の時間に延々と戦争中の思い出話などされると、お客さまであるがゆえに「うるさい!」ともいえず、閉口してしまいます。

このページの先頭へ