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相続の本質(11)

2020年7月19日「日曜日」更新の日記

2020-07-19の日記のIMAGE
銀行での相続のお手続には、法定相続人の方全員の意思確認が必要となりますので、お尋ねした次第でございます」との説明がなされました。相続放棄のことを教えてくれた友人も、そんなことは言っていませんでしたし、義理の両親に話をする前に、もう一度自分でインターネットの情報を確認したのですが......目にした記憶もありません。敏子さんは、後日あらためてうかがうことを担当者に伝え、仕方なく銀行をあとにしましたが、義弟の浩二さんにこの話をしなくてはならないのかと思うと、憂鬱で仕方ありませんでした。浩二さんは、独身で海外出張も多い多忙なエンジニアですが、気さくで頭の回転の早い人という印象です。でも、日ごろ会うことはめったになく、先日の祐樹さんのお葬式には、出張を切り上げて駆けつけてくれましたが、その前はいつ会ったか覚えていない程度の付き合いです。もちろん、連絡先も知りませんから、義母に連絡して事情を話し教えてもらうことにしました。義母は、「それは大変だったわね、私たちもそんなこと全然知らなかったわ」といって驚いていました。そして......「あの子だって、祐樹の財産をもらおうなんて考えは夢にもないはずよ。事情はわかったから、浩二も相続放棄の手続をするように連絡しておくわ」と言ってくれたのです。その後電話を切ってからその場に座り込んだ敏子さんは、義母の気遣いが、うれしく心強くもあり、しばらく涙が止まりませんでした。それから約1ヶ月後、浩二さんの「相続放棄受理証明書」も揃い、敏子さんは銀行での相続手続を無事に終えることができました。そして......これからの生活に困らない程度の相続財産を遺してくれた祐樹さんを、「こんな温かい家族のなかで育った人だから、やさしかったんだなぁ」としみじみと思いながら、相続に全面的に協力してくれたとても寛大な祐樹さんの家族に心から感謝したのでした。敏子さんは、祐樹さんのご家族の寛大さに救われて、発生した相続問題をクリアすることができましたが、実際にはこのようにうまくいくケースばかりとは限りません。ぜひ、事前の対策をしておきたい典型的なケースといえるかもしれません。では、具体的にはどのような備えをすることができるのでしょうか?

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