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相続問題の事例(3)

2020年7月25日「土曜日」更新の日記

2020-07-25の日記のIMAGE
しかし、遺言書のなかに、農地を夏男さんに全部相続させたいと考えた理由について、和子さんの気持ちを若菜さんに伝わるように書き込んでおき、それを読んだ若菜さんに和子さんの気持ちが伝われば、遺留分の請求をしないかもしれませんよ、と提案してみました。そうは言っても、実際には、そういった文章をご自分で書くことができる人は少ないため、私が長時間インタビューして原案を作成するほうが多いのが実情です。和子さんの想いは、土地に対する強い思い入れでした。女学校を出て、農業などやったことのない女の子がお嫁に来て、朝5時に起きて食事の支度をし、あとは、日が沈むまで畑で働く毎日でした。「冬なんて、指がパックリ割れてねえ、それでもご飯を作らなきやいかんし、畑にも行かにゃいかん。朝が来なければいいって、ふとんの中で泣いてたよ。でも、そうやってお父さんといっしょに畑を守って、子どもたちを食べさせてきただに。本当に、畑のおかげだよ。ありがたい話だに。畑だけは大事にしにゃいかんに」和子さんは遠くを見つめながら、想いを語ってくれました。遺言を作るときは、財産をどのように分けるかということが中心となりがちですが、遺言者の想いを、付言事項として記載しておくことも重要であると思います。和子さんが亡くなったとき、遺言書を読んだ相続人全員が、「遺言書を見て、母さんの気持ちがよくわかった。母さんの決めたとおりに相続を進めよう。それが母さんへの恩返しだよ」と納得し、相続争いをしたり、遺留分を主張することのないように付言事項の文章作りをお手伝いするのも、私たちの重要な仕事であると思います。和子さんは、仏壇の中のご主人に報告をしたとのことです。「遺言っちゅうのを作ったで、これで安心してお父さんのとこに行けるよ。でも、今まで働いた分、旅行したりして遊ばしてもらうから、すぐには行かんでね」

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