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2020年7月27日「月曜日」更新の日記

2020-07-27の日記のIMAGE
相続が開始すると、原則として、相続人は被相続人に属した一切の権利義務を承継することになります。つまり、プラスの財産だけでなく、借金や保証人の責任など、マイナスの財産も承継することになるのです。本件において、「父」が亡くなった状況等を踏まえると、金額の多寡はさておき、住人側の言うとおり慰謝料の支払義務が発生していることは否めず、法学的な議論の余地はあるものの、その慰謝料支払義務を相談者が相続することになると考えられました。そこで、私は、法的および経済的な問題への処方せんを作成すべく、亡くなった父の財産に関する情報を収集することにしました。その結果、亡くなった父には、プラスの財産と呼べるものは居住していたマンションの1室しかない一方、マイナスの財産としては水道光熱費やマンション管理費等の日常生活上の支払程度があるだけで、慰謝料のほかに目立った負債がないということがわかりました。しかし、唯一のプラスの財産といっていいマンションについては、築年数が30年を経過し、部屋も手ぜまなうえ、半年前に「母」が自殺したという事情もあり、残念ながら早期売却の見込みはほとんどありませんでした。私は、1週間ほど思案したあげく、改めて来所した相談者に対し、相続放棄と限定承認についてそれぞれ説明したうえで、相続放棄の申述をすることを勧めました。私には、過去に限定承認の手続を手助けした経験があり、そのときの相続人の苦労を想起し、相続放棄を勧めるに至ったのでした。しかし、私の勧めとは裏腹に、相談者は、「迷惑をかけた方にできる限りのことをしたい。それが私たち子どもとしての責任だと思います」と言い、無理やり作ったような笑顔で「限定承認にします」と言いました。

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